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2016年12月11日

シラス台地の農業とその形成

なぜかみんな知ってるシラス台地
覚えるのに苦労した記憶が全くありません。
日本で一番有名な台地なのではないでしょうか。

でも、どうやってできたのかご存知ですか?
私はこれまで、桜島の火山灰が降り積もってできた台地だと思っていました。
しかし、シラス台地は、想像を絶する、九州の縄文文化を滅亡させるほどの大火砕流によって形成されたものでした。つまり、「桜島の降灰=シラス」というわけではないということです。

名前とちょっとした特性だけ覚えていたシラス台地を、もう少し深く知っていきたいと思います。


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シラス台地の農業の特色

シラス台地は鹿児島県と宮城県に分布する火山噴出物からなる台地です。
この火山噴出物がシラスと呼ばれる細かい軽石で、シラス台地の名前の由来となっています。
シラス(白砂、白州)は地質の名前で一般名詞であり、シラス台地は台地の名前で固有名詞となっています。

火山性の台地であるために、植物の成長に必要な栄養分が少なく酸性の土壌である上に、降った雨はどんどん地中に吸い込まれてしまい、台地上には水源がほとんどありません
台地上からでは50〜80mの深井戸を掘らねばならず、掘ったとしても水をくみ上げるには人間一人の力ではくみ上げられないほどでした。
大隅半島の笠野原台地にある、鹿児島県指定史跡「土持堀(つっもっぼい)の深井戸」は、江戸時代後期に掘られた深井戸で、その深さはなんと64m。

つまり農業(特に稲作)には適していない場所なのです
そのため、中世に至るまで、ほとんど開発されることはありませんでした。

開発が急速に進んだのは、サツマイモの栽培が始まる近世(江戸時代)になってからです。
サツマイモは中南米が原産地で、江戸時代に日本に伝わりました。
サツマイモは痩せた土地でも育つので、飢饉対策として栽培されていきました。

明治以降はさらに大規模な開発が行われ、畜産試験場がつくられ、牛や豚の改良が行われました。
シラス台地で作られたさつまいもや芋焼酎の搾りかすなどを飼料として育てられました。
ほどよく脂ののった上質な肉質で全国的にも人気です。

シラス台地

第二次大戦後、笠野原台地や南薩台地などで、畑地灌漑事業によってパイプラインを通して台地上に水が供給されるようになりました。
それによって商品作物への転換がさかんに行われ、大根、ニンジン、茶などが栽培されるようになりました
また、日本の食の多様化に合わせ、畜産もさかんに行われるようになりました。

【 じゃがいも生産量 】
順位都道府県生産量(t)全国比
北海道191600078.0%
長崎県1053004.3%
鹿児島県935003.8%
茨城県424001.7%
千葉県294001.2%
-全国2456000100%
【 さつまいも生産量 】
順位都道府県生産量(t)全国比
鹿児島県33630037.9%
茨城県17300019.5%
千葉県10850012.2%
宮崎県9410010.6%
徳島県271003.1%
-全国886500100%
【 だいこん生産量 】
順位都道府県生産量(t)全国比
北海道17440012.0%
千葉県15880010.9%
青森県1255008.6%
鹿児島県982006.8%
宮崎県929006.4%
-全国1452000100%
【 茶生産量 】
順位都道府県生産量(t)全国比
静岡県3310039.6%
鹿児島県2460029.4%
三重県67708.1%
宮崎県38704.6%
京都府29203.5%
-全国83600100%
【 肉用牛 】
順位都道府県頭数(万)全国比
北海道50.520.3%
鹿児島県32.313.0%
宮崎県24.910.0%
熊本県12.55.0%
岩手県8.93.6%
-全国248.9100%
【 ぶた 】
順位都道府県頭数(万)全国比
鹿児島県133.214.0%
宮崎県83.98.8%
千葉県68.17.1%
北海道62.66.6%
群馬県61.36.4%
-全国953.7100%
農林水産省しらべ


シラス台地をつくったのは桜島の本体

桜島

現在も噴火を続ける桜島ですが、実はこの桜島は巨大火山の一部でしかありません。
桜島には親分というか、本体が存在するのです。
桜島より北側、鹿児島湾の北半分が桜島の本体であり、「姶良(あいら)カルデラ」という巨大噴火口なのです
この姶良カルデラがシラス台地の形成に一役買っているのです。

姶良カルデラ

この巨大噴火口は、南北17キロ、東西23キロという阿蘇カルデラ並みの大きさです。
噴火すれば壊滅的な被害をもたらす火山が、鹿児島市の隣に存在するのです。


姶良カルデラと姶良大噴火

姶良カルデラは約2万9千年前に大噴火を起こしました。
始めは桜島付近で噴火し、一旦は活動を休止しました。
しかし、その数か月後に、姶良カルデラ全体を噴火口とする破局的な超巨大噴火が起こりました。
この一連の噴火は姶良大噴火と呼ばれ、噴出物の総量は450〜500立方キロメートルと推定されています。
上空3万メートルまで吹き上げられた火山灰は、偏西風に乗り、遠く東北地方にまで降り積もりました。

そしてなんといっても恐ろしいのは火砕流です。入戸火砕流と呼ばれています。
姶良カルデラから噴出した巨大な岩石が、熱と一緒に吹っ飛んで来るのです。
これにより、九州南部の旧石器時代人は滅亡したとされています
そして、この火砕流の噴出物が冷えて固まることによってシラス台地が形成されたのでした



鬼界カルデラとアカホヤ噴火

火砕流の範囲
姶良・鬼界両カルデラの火砕流の範囲

それだけではありません。
約7300年前には、九州の南の海底にある鬼界カルデラが破局噴火(アカホヤ噴火)を起こしました。
噴煙は上空3万メートルにまで上昇し、火砕流は海上を走って薩摩半島にまで到達。
この噴火による火砕流は南九州を焼き払い、九州南部の縄文文化を壊滅させたそうです
これを幸屋火砕流といいます。

また、鬼界カルデラが形成される過程で津波も発生しており、相当な被害をもたらしたと考えられます。
大分県の横尾貝塚では、このアカホヤ噴火に伴う津波の痕跡が発見されています。

こうしたいくつかの大火砕流によってシラス台地が作られていったのでした


さいごに

現在でも桜島は火山活動を続けています。
たまにニュースで映像を見て、
「こんな感じでシラス台地ができたんだろうなぁ」
と思っていました。
しかし今回調べてみて、これまでの想像を超える大規模な噴火によってシラス台地が形成されたことに驚きました。
いや、ほんとビックリ。

ただの湾やら湖やら海やらが、大昔は巨大噴火口だったとか言われても、すぐには納得できませんでした。
恐ろしいものだとは思いつつも、火山に興味が湧いてきました。
今まで当たり前だと思ってきた知識を調べなおしてみると面白いですね。

ここまで読んでいただきありがとうございました。




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posted by ナマハゲニウム at 16:13 | Comment(0) | TrackBack(0) | 地理ネタ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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