みなさんは「やませ」って聞いたことありますか?
学校で習いましたよね。
東北地方に冷害を招く原因となる風です。
今回は、その「やませ」の意外な一面をご紹介します。
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やませと冷害の原因
やませは6月〜8月にかけてオホーツク海から吹く東よりの冷たい風です。
「山背」とも書き、北上高地を越えてくる風という意味でもあります。
オホーツク海上にオホーツク海気団が発生すると、
そこから吹く風が、寒流である千島海流の上を通って冷やされます。
また、海の上を通るので、この風は湿っています。
なので、北海道や東北地方の太平洋側で濃霧を発生させます。
さらに、梅雨が長引けば、稲の成長に必要な日照期間・温度が確保できず凶作となってしまいます。
これがやませによって冷害が発生する原因です。
北海道では冷夏に適した農業を行っていますが、
東北地方では、冷害以外の年は関東並みに暑くなるため、
稲作主体の農業を行っています。
なので、やませが吹いて冷害となると、
モロに影響を受けてしまうのです。
やませは「宝風」?
ところが、この「やませ」が「宝風」として喜ばれているところがあります。
秋田の民謡「生保内節(おぼねだし)」では、
「吹けや生保内東風
七日も八日も 吹けば宝風 ノオ稲みのる」
と歌われているのです。
「小保内東風」とは「やませ」のことです。
日本海側では冷害を引き起こすやませを「宝風」として喜んでいます。
いったいなぜなのでしょうか?
やませが「宝風」となる仕組み
その理由は「フェーン現象」です。
フェーン現象とは、湿った空気が山を越えるときに、
山の風下側で気温が上昇する現象のことです。
夏の時期は太平洋側から東から風が吹きます。
このときの温度を仮に30℃とします。
空気は100m上昇するとともに温度が1℃下がります。
ところが、湿った空気が冷やされると飽和状態となり、
水蒸気が水滴に変わっていきます。
そのとき、100mにつき0.5℃しか下がらなくなります。
そのため、1000m〜2000mでは0.5×10=5℃しか下がらず、
奥羽山脈を超えるころには15℃となります。
山頂から風が吹き下ろすときには、風は乾いているので、
100mにつき1℃ずつ温度が上昇していきます。
なので、日本海側では35℃となります。
つまり、夏の時期、東風が吹くと太平洋側より日本海側の方が暑くなるのです。
宝風が吹けば、日照時間が多くなり、気温が上昇します。
これが秋田でやませを「宝風」と歌う理由です。
ちなみに、北上高地はだいたい1000m以下の山が多く、
雨を降らすまでには至らないので、
太平洋側の北上盆地を暖かくすることはありません。
さいごに
一つ山脈を越えるだけでこんなにも扱いが違うなんて驚きですよね。
気候を理解するためには、海流や山地・山脈といった地形の性質を理解することが大切であるということですね。
東北の気候を理解するには、千島海流と奥羽山脈が重要である、と。
実はこの話は、私がもう一度地理を勉強してみようかなと思ったきっかけでもあります。
それまで、地理はただの暗記科目だと思っていました。
でも、ただ暗記するだけではなくて、どうしてそうなるのか、どうしてこれを覚えなくてはならないのか、といった理由が理解できるとすんなり頭に入るのです。
そして学校では習わなかった「宝風」という存在が私を刺激させてくれました。
そんなちょっとした感動・驚きが少しでも伝われば幸いです。
ここまで読んでいただきありがとうございました。